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月曜日, 11月 30, 2009

次はザック・ポーゼンとターゲットのコラボ



ユニクロとジル・サンダー、H&MとSONIA RYKIEL、GAPとステラ・マッカートニー...と過去モノまで挙げたらきりがない大物デザイナーと製造小売業のコラボレーション。このリレーはどこまで続くのか。

今日WWDが発表したのは大手ディスカウンターのTARGETがデザイナーのザック・ポーゼンと来年の春物商品でコラボするという記事。「Go International」というシリーズで4月には店頭に並ぶとのこと。気になるお値段は、14~149.99ドル。通常の彼のコレクションが900~1200ドルすることを考えればファンには魅力的な価格だ。

同時にザック・ポーゼンは自身のセカンドランともいえるライン「Z Spoke」をサックス・フィフス・アベニューから独占で発表する。これまで衣料小売店やディスカウンター中心だったコラボレーションが、これを機に大手デパートへも飛び火しそうな勢いだ。


http://racked.com/archives/2009/11/30/collabs_zac_posen_for_target_this_spring.php
Collabs: Zac Posen for Target This Spring
Monday, November 30, 2009, by Elizabeth Licata

土曜日, 11月 07, 2009

SS2010 NY Fashion Week

New York Fashion Week SS 2010

先シーズンは、環境問題やリーマンショックなどの外的要因が、表現に違いこそあれ作品に大きくに反映されていたように思う。一方、先日開催されたSS2010・NYファッションウィークでは各ブランドとも厳しい予算の現状は続くものの、この社会的プレッシャーを感じさせない、デザイナーの想像力が前面に表現された作品が目立った。今回は、彼らの表現力を支えるテキスタイル・プリント/染め・カット・ドレープ等のテクニックが美しかった作品に注目しながら、ハイエンドとリアルクローズのブランドをレポートした。



<ハイエンド>

PRABAL GURUNG /プラバル・グルング
http://www.prabalgurung.com/



      

今回が3シーズン目の若手デザイナーのプラバル・グルング。NYコレクション2年目と言えば、新鮮さの中にオリジナリティを出しながら、高いクオリティが試される。会場は前回も使われたチェルシーにあるフラッグ・アート・財団。プレゼンテーションはその最上階のバルコニー付きの真っ白なフロアーで行われた。

今年多くのデザイナーの間で目立っていた赤(今季よく見られたオレンジをちょっと添えた赤ではなく、鮮やかな赤だった)、青、白、黒を基調としたシンプルな色調。ソリッドカラーがほとんどを占める中に、水玉と絞り柄のドレスが数点。写真を見て改めて驚くのは、エッジーなディテールが細部に凝らしてありながらも、全体の印象がとてもエレガントな事。今回のインスピレーションの一つが、自身の母親の香水ボトルだったように、パッケージデザインから多くのヒントを得たという。様々な形のリボンが、彼のコレクションに花を咲かせた感じだ。裾をリボンで絞ったパンツや折り紙(ラッピング)のようなトレンチやドレスが面白い。ウエストと腰回りのドレープやひだの取り方はドレスをとても美しくしているし、同時に着易くもしている。ワンショルダーのドレスやバルーンスカートなどトレンドも意識していてバランスが良い。ドレッシーなコレクションだが、普段着られるアイテムも多く、生活をワンランク挙げてくれる装いはまさにWANNA-BEセレブにはもってこいのラインだ。彼のドレスを纏うセレブには、デミー・ムーア-、ゾーイ・サルダナ、レイチェル・ワイズがいる。

終始作品を一点ずつ手に取るように熱心に説明していたのが印象的なデザイナーのグルング。彼はシンガポール生まれのネパール育ちで、デザインが開花したのはインドのニューデリーだった。ナショナルファッション工科大に通いながら、地元で幾つものプロダクションで働き、Manish Aroraのデザインも手がけた。後にロンドンでスタイリストアシスタントとして多くのショーや、パブリケーションの仕事を経験。1999年にNYへ渡り、DKNYでインターンをしながら、パーソンズへ通う。その一年目にパーソング/FITコンペで優勝する。シンシア・ローリーのデザインチームで2年働き、デザイナー としてビジネスマインドを学び、ビル・ブラスで5年間デザイン・ディレクターを勤めた後に独立。彼の経歴からも想像がつくように、古典的な服飾技術を持ちながら最新のテクノロジーやデザインを加味していくスタイルが持ち味とHPで紹介している。現在はニューヨークとカリフォルニアのブルーミング・デールズにショップがある他、海外はサウジアラビア、ジャカルタ、トロント。



PREEN / プリーン
http://www.preen.eu/




今季はプリーンの地元であるロンドンコレクションの25周年。ブリティッシュ・ファッション・カウンシルが英国出身デザイナーを再び本国へと招致する中、プリーンはNYでのコレクションを決定。デザイナーのジャスティン・ソーントン(Justin Thornton)とティア・ブルガッジィ(Thea Bregazzi)は“インターナショナルなブランドになれたのはNYコレクションのお陰”と彼らにとってNYマーケットの重要性を改めて示した。会場はミーとパッキングエリアにあるMILK STUDIO。

インスピレーションは「切片」「グラフィック・ライン」「華奢なランジェリー」、そして90年代初期にフォトグラファーのコリン・デイがコミューンの日常を赤裸々に綴った写真集「極私的ワールド」。それらは緻密なテクニックによって様々な形で作品に反映されていた。例えば左写真では、小さな切片のファブリックが柔らかい葉のように一面に生地を覆い、ドレスはまるでトピアリーという園芸テクニックで刈り込まれたように彫刻的な構造を浮き出している。中央のスーツは写真では見えにくいが、四角くエンボス加工されたシルク生地が使われている。シルクをエレガントやセクシーという枠から外し、シャープさや強さを表現できるマテリアルにした、という点に感動した。その他写真にはないが、ファブリックを捻って形作ったトップや、大胆なシルバーパンツにも目を惹かれた。シアー/スケ感を強調した装いも見られたが、直後のパリコレでもクリスチャン・ディオール、シャネル、ニナ・リッチなどをはじめ多くのコレクションがこれに続いた。最後にもう一つ注目したいのが、今回から加わったシューズのコレクションだ。身体に巻きつけられたコードがソフト・ボンテージを匂わすが、華奢なスタイルから力強いデザインまでバランス良く含まれ確実にファンを増やしそうだ。

1996年にスタートしたこのブランド。名前の由来は鳥が毛繕いする動作=“着飾る”から。97-98年 A/W よりセカンドラインの「Preen Genes」を展開している。




<リアルクローズ>

CYNTHEA ROWLEY / シンシア・ローリー
http://www.cynthiarowley.com/





会場のセットは廃屋と化したボールルーム。突然上からハラリと白い大きな布が降りてきて、ランウェイを覆った瞬間ショーが始まった。今回のテーマを“scary and pretty”と表現したデザイナーのシンシア・ローリー。ダークなトーンの中にもどこか軽やかで優しくて、まるで居心地の良いおとぎ話のような世界にいるようだった。会場は36丁目のGotham Hall New York。

中央のドレスは、青、紫、緑、ピンクと複雑な色合いのフラワープリント。絵の具を溶いたようなぼかしテクニックがドレスに柔らかさを添える。膝部分に切り込みが入ったパンツ(右)やドレスは、グログランリボンを繋ぎ合わせた生地で出来ていると知って驚いた。左のシャネルを髣髴させるシックな白のワンピースは、黒のテープに沿って入ったぼかし染めのテクニックでエッジィさが光る。ロングセーターが埋もれるほど付いたスパンコールは着る人を華奢にそしてとてもゴージャスに見せるに違いない。

ショーの数日後、写真を撮る機会があったのでショーに使われたアクセサリーも含めてじっくり見せてもらった。ウエスト周りのダーツの入れ方がユニークだったり、ファブリックに新たな発見があったり、細部に凝ったスパンコールデザインが美しかったり、とランウェイでは分からない新たな発見が。コレクションで使われた大きなリポンのサンダルが、とても可愛らしく履きやすいアイテムとして目に留まった。ピンク、ピスタチオ、青など奇麗なカラーのバッグは50年代風のビンテージ感漂うライン。今回は前回の作風を大事に継承したようなコレクションといえるが、新鮮に映るのは最初に述べたようなショーの演出の上手さかもしれない。手染めのテクニックとそのテキスタイル加工、ウィットに富んだマテリアルから気づくように、デザイナー本来の発想やスタッフのテクニックを大事にし真剣に向き合った結果が上質感として作品に現れたようだ。

シンシア・ローリーは1988年にブランドを設立。1994年ソーホーに直営店をオープンし、現在はウェストビレッッジにオフィスと店を構える。他にシカゴに2店舗、ボストン、チャールストンにそれぞれ1店舗ずつ。1995年1月CFDA「ペリーエリス賞」(新人賞)を受賞している。



RACHAL COMEY / レイチェル・コーメー
http://www.rachelcomey.com/





招待状には「ルーフトップにて、雨天決行」とあった。今年のファッションウィーク中は天候がくずつき、この日のショー関係者もよほど気を揉んだに違いないが、幸運にも当日の11時は爽やかに晴れ渡った。会場は給水塔の周りを囲むように木製のベンチが置かれ、座って待つ間ミュージシャンのSaint Vincentがオルタナティブ系のサウンドを演奏していた。デザイナーはこれまで多くのミュージシャンの衣装を手がけてきたが、このボーカルのAnnie Clarkもそのひとり。Annieがステージに立つとショーが始まった。

今回のテーマは、デザイナー本人が夏の休暇を過ごしたというノーザンコースト(メイン州の海岸)のリラックスしたシーン。“元気なシティガールに着て欲しいとイメージしたから、ショーは自然光の下でしたかった”といかにこの日の天候が大事だったかを語ってくれた。バリエーションに富んだ 40ルックスは、ゆったりしたパンツやふわりとしたショーツ、ドルマンスリーブのザックリとしたブラウスやドレス、後ろボタンのカーディガン、とエアリーでリラックスした装い。青、水色、薄いピンク、赤、黄色、緑と非常に色彩豊かだが、トーンダウンしていて他の3つのコレクションとはちょっと異なるパレットだ。アースカラーもたくさん見られ、中でも近年あまり見かけなかったレンガ色が並び良くも悪くも気になった。好印象だったのは、ラストに5点続いたマッキントッシュ加工のジャケットとレインコート、それに淵の広い帽子。“今年の春は雨が多かったことに影響を受けたの”と話してくれ、“アウターには取り外し出来るポケットや、隠れたフードなど機能的な要素がデザインに取り入れてあるのよ”と種明かしもしてくれた。日本でも長靴が大ブームになったが、思わず来年から私も連日の雨でも装いを楽しめるようにレインコートを2、3着揃えようかという気にさせられる 。最後に、もう一つ印象的だったのがデフォルメした水たまりやボブキャットなどの美しいプリント。ニューヨーク在住のアーティストLeanne Shaptonとのコラボレーションによるものだ。デザイナーの友達というLeanne はテキスタイルデザインの他、アートディレクター、イラストレーター、作家と多才な顔を持つ。

「Leanne Shapton」http://www.leanneshapton.com/





今回はテキスタイル加工や、染め、デザインテクニックなどでデザイナーの力量が光ったコレクションをまとめてみた。気が付けば前回ブライアントパークでショーをしたプリーンも含め、取りあげた4つのブランドはショーをテント以外のチェルシー地区周辺の会場で開催している。まだ景気が復活したとは言えない状況でのコレクションだったが、ハイエンド、リアルクローズに関わらず、彼らのクリエイティビティが予算という限界を超えて研ぎすまされて行くその力強さを嬉しく感じた。WWDは10月20日付けのグローバルテックスの取材で、多くのデザイナーがファブリックに付加価値を求めていると書いた。前衛的なスタイルを作り出す最新技術の素材の中にも環境への配慮のあることが大事だとか。このレポートからも想像するに、恐らく今後課題となるのはプロダクション。職人技が必要になりそうなアイテムも多い中、予算と時間のやり繰りでどこまでコレクションが製品化出来るのかが気になる所だ。



参考文献
「WWD」http://www.wwd.com/
「Style.com」http://www.wwd.com/
「Senken Shinbun」http://www.senken-intl.com/